超音波による核整列状態の固体ヘリウム-3の研究

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05452055
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 水崎 隆雄 京都大学, 理学部, 助教授 (20025448)
• 研究分担者: 大見 哲巨 京都大学, 理学部, 助教授 (70025435) ; 恒藤 敏彦 京都大学, 理学部, 教授 (30025275)
• キーワード: 固体ヘリウム-3 / 超音波 / 核磁気共鳴 / 核整列 / 超流動^3He / 結晶成長 / 超低温 / U2D2

研究概要

超音波とNMRと組み合わせて固体^3He核整列状態(主に低磁場相に重点を置く)の次の問題を研究する。(1)常磁性相から核整列相への一次転移に伴う音速の変化(交換相互作用のグルナイゼン定数が非常に大きいので1%程度の音速の変化が予測される)(2)磁気異方軸に対する音速の異方性(NMRスペクトルの解析より0.1%程度)(3)スピン波の音響モード、光学モードと超音波との共鳴吸収の観測(4)多重スピン波励起による超音波の減衰機構の解明(5)線欠陥に伴う磁気的面欠陥の存在と超音波吸収機構。
本年度は予備実験を行い以下のような成果を得た。
1.核整列状態の磁気的性質、特に低磁場相(U2D2相)でのパルスNMRによる非線型な核スピン運動の動的性質の研究を行った。単結晶でかつ単磁区構造を持つ良質な固体^3He作成に成功し、そのような固体を用いてスピンの一様モードが長波長のスピン波を励起して不安定になることを見いだした。
2.超低温(1mK以下)での超流動^3Heからの核整列固体^3Heの結晶成長の実験を行い、絶対零度近傍での螺旋転位を伴った量子的な結晶成長機構を観測した。また、固体の融解についても特徴的な結果を得たが、その機構については未解決の問題である。
3.核整列状態の固体^3Heの超音波の実験のための超音波装置一式を完成させ、ヘリウムを用いて超低温での予備テストを行った。2.の実験結果を生かして、単結晶でかつ単磁区構造を持つ良質な固体^3Heを超音波セル内に成長させる特殊な試料室を設計し、テストした。核整列固体の超音波の実験が近く開始される。

研究成果

• [文献書誌] T.Matsushita: "Nonlinear Spin Dynamics in the U2D2 Phase of Nuclear-ordered Solid ^3He" Proc.of LT-20. (to be published in Physica B).
• [文献書誌] T.Arai: "Diffusion Measurement of Atomic Hydrogen in Helium Gas at Very Low Temperatures" Proc.of LT-20. (to be published in Physica B).
• [文献書誌] R.Nomura: "Crystal Growth of U2D2 Solid ^3He" J.Low Temp.Physics 94 Nos.4/5. (to be published). (1994)
• [文献書誌] A.Matsubara: "Quest for Kosteritz-Thouless Transition in 2-Dimensional Polarized Hydrogen" Bose-Einstein Condensation,p.428-435,ed.by A.Griffin,D.W.Snoke and S.Stringari(Cambridge University Press,N.Y.). (1994)
• [文献書誌] T.Tsuneto: "Note on Frost Heave" J.Japanese Phys.Soc.(To be published).
• [文献書誌] I.A.Fomin: "Theory of the anomalous cw-NMR frequency shift in U2D2 solid ^3He" Physics Letters A. 180. 141-144 (1993)