研究概要 |
有機伝導体α-(BEDT-TTF)_2I_3は135Kで絶縁体に転移をするか、この転移は圧力を印加すると抑えられる。われわれは、これに磁場をかけると絶縁体転移が復活する現象を見つけその出現機構を調べた。 1)α-(BEDT-TTF)_2I_3について,金属状態にある試料ホール効果を調べた。この物質の金属相は温度に依存しない伝導度で特徴づけられるが、これは温度降下とともに伝導担体の濃度が減少する効果と、移動度が大きくなる効果が相殺した結果であると結論した。これをふまえて、この物質の磁場誘起絶縁体転移は非常に小さくなったフェルミ面で起ると結論した。 2)磁場誘起絶縁体転移がα-(BEDT-TTF)_2I_3以外の物質で起こる可能性を調べるために、α-(BEDT-TSeF)_2I_3について低温、高圧力下で磁場中抵抗の測定を行なった。その結果、この物質でも磁場誘起絶縁体転移がおこること、ただし担体の移動度が小さいので、転移がおこる磁場が高くなることが明らかになった。さらに絶縁体転移温度より高温の領域で、ホール効果と電気伝導度の同時測定を行った結果、この物質でも電気伝導担体の濃度は温度低下とともに減少すること、一方移動度は増大することがわかった。 以上を総合して、本研究では、α-(BEDT-TTF)_2I_3及びα-(BEDT-TSeF)_2I_3について、i)圧力を印加して絶縁体転移をおさえた試料を磁場中におくと絶縁体転移がおこること ii)高温金属相では両物質とも温度依存性のない伝導性を示すが、これは担体濃度の温度変化と、移動度の温度変化がちょうど相殺した結果てあることを明らかにした。
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