平成5年度は、(1)光学窓付ベルセロ容器の試作・テストと(2)ラマン分光用の光学系の組み立て・分光器のコンピュータ走査プログラムの作成・テストを行った。特に(1)の結果、以下の事実が判明し、これに基づいた分光用セルの設計を行っている。 ステンレス銅の容器本体にサファイアを窓材ホルダーに入れて組み立てる方式をとった。窓材と金属の間に柔らかい材料をはさみ、これを塑性変形させて"圧力もれ"を防止することにした。テストの結果、 (1)高分子フィルムは、強力なガス発生源であり、使用不可能である。 (2)金属箔としてAl、Auをテストした。Alは水に腐食され水素を発生するので不適当。Auは数百回の温度サイクルで、-100barの負圧に耐えうる程度にコンディショニングできる。 (3)窓材は、石英よりサファイアが強度的により適している。 (4)窓材ホルダーは、窓材よりその熱膨張率が殆ど等しいか、わずかに大きい金属にする。サファイアに対してMoが適している。このとき、To(ベルセロ系の内圧が零となる温度)で組み立てておくと、圧力もれが起きやすくなる負の圧力(低温)で、熱応力が窓材-金属箔-金属の密着を良くするように働くからである。 (5)使用金属の予脱ガスは、その金属の再結晶化温度以下にすべきである。再結晶化温度以上の処理はグレインバウンダリーにそって欠陥が発達して、かえって高負圧が発生しにくくなる。 (6)水と接する全ての材料は使用直前に、キャビテーションの核をできるだけ消去しておく必要がある。なお、この目的のために、平成6年度、臨界条件を超える温度・圧力の水に全ての材料を浸漬し、全ての欠陥を"水びたし"にすることを試みるためのオートクレープを作る予定である。
|