本研究は超高速かつ高効率な3非線形光学応答が実現するための条件を探ることを目的として、光励起した際に生じる巨視的分極のコヒーレントな振動を検出する方法を開発し様々な物質系で実験を行った。まず、縮退4光波混合信号を励起光とマイケルソン型干渉計を用いて干渉させることにより、3次の非線形分極のコヒーレンスを時間軸上で観測する方法を提案した。これを用いて次のような実験を行った。 1.励起子分子のコヒーレント振動の直接観測 フェムト秒パルスで励起子分子を2光子共鳴励起し、2f周波数でのコヒーレント振動を観測することに成功した。励起子分子は50ピコ秒以上もコヒーレントな振動を繰り返した。 2.励起子分子波の干渉効果の実証 直交する偏光をもつビームで独立に励起子分子を作り、それらの相対位相を変化させながら重ねあわせた。その結果励起子分子の振幅はそれらの相対位相に敏感に変化することをみいだした。これは、励起子分子がスカラー波として干渉することを示すものである。 3.弱く相互作用する2つの励起子の2光子コヒーレンスの観測 励起子分子が安定には存在しないGaAs量子井戸で、弱く相互作用する2つの励起子の相関による2fの振動を確認した。 4.2次元フレンケル励起子のコヒーレンスの測定 アントラセンの表面励起子のコヒーレントな振動をポンププローブ法により観測し、コヒーレントな信号を検出した。 5.励起子-微小共振器結合系の縮退4光波混合 励起子を並行平板型微小共振器に閉じこめた系を用意し、励起子のコヒーレント応答や非線形性を調べた。共振器による実効電場の増強による非線形光学応答の増強が確認された。また、励起子-共振器の結合ポラリトンモードが確立するとコヒーレント応答が変化することなどが見いだされた。また、これらは弱く相互作用するボゾンのモデルによりよく説明できることが明らかになった。
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