(1)本研究の対象となる二準位系原子の調査を行い、アルカリ金属原子であるルビジウムを選択した。ルビジウム原子の冷却に必要な共鳴波長は780nmであり、市販の半導体レーザーをそのまま用いることができるので手軽である。 (2)グレーティングによる市販の半導体レーザーに光学的負帰還を施し、線幅を狭窄化したまま広範囲で波長可変なレーザーシステムを製作した。得られた線幅は、ファブリペロー方式のスペクトラムアナライザの分解能(1.5MHz)以下であり、当初の目標を達成している。また、グレーティングの角度を電歪素子でわずかに変化させることで、発振波長を精密に掃引する事ができた。しかし発振波長が786nmと長波長側にずれており、グレーティングの角度調節だけでは必要な波長にあわせることができなかった。光スペクトラムアナライザで半導体レーザーのゲイン領域を調べた結果、780nm付近にはほとんどゲインがないことが判明し、現在素子の交換を行っている。 (3)(2)の光源の製作と平行し、ルビジウム原子の光磁気トラップの準備として、超高真空装置の試作を行った。ターボ分子ポンプを用いた設計とし、現在のところ2x10^<-7>Paの真空度を得ている。これはトラップには十分な真空度である。 現在は、実際にトラップ・レーザー発振を行うための真空装置を設計・製作している。 以上の様に、平成5年度は、多光子レーザー発振のために必要な基本装置の整備を行い、ほぼ要求される性能を満たすことができた。また、当初はルビジウム原子の吸収分光までを予定していたが、試料・光源の都合で多少遅れている。
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