季節内振動は、季節進行および年々の変動と密接に関係している。その典型的な例として1993年の夏のモンスーン季におけるチベット高原での大気循環の季節内振動の様相を、高層ゾンデ観測により、明らかにした。この高原では、年によって、30-40日振動が卓越したり、この年のように、10-20日振動が卓越したりという、非常に明瞭な年々の特性を持っている。このような年による周期の選択が何に依っているのか、今後の課題として興味深い。 また、気候システムの季節変動や年々変動の中で、変動のどの部分が外部強制(forcing)によるもので、どの部分が自然変動として認識されるものかを分離することは、きわめて重要な研究課題である。 モデルによる研究では、昨年度は簡単な順圧大気モデルを1000年間時間積分し、自然変動の定量的な評価を行なったが、そのモデルには自然変動を純粋なかたちで再現するために季節変化をあえて入れていなかった。そこで本年度は、この順圧大気モデルに観測される程度の年周期を強制的に励起させ、そのスペクトル特性を調べた。季節変動を導入した順圧大気モデルを100年間積分し、自然変動の変動特性を解析した結果、スペクトルピークは年周期にだけ現われて、HarmonicsやSubharmonicsは現われななかった。この結果は、季節内変動や年々変動は、年周期が大気の非線形性で変調したものではないことを示唆しているという重要な結論がえられた。
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