鉱物中に保存されているU-238の自発核分裂の飛程測定を行い、その分布パターンを解析することにより、鉱物が受けた熱履歴を定量的に検討するための一連の実験を行った。さらに閉鎖温度の異なる放射年代測定(角閃石や黒雲母をK-Ar法、ジルコンやアパタイトをフィッション・トラック法、サーモルミネッセンス法)を行った。古地熱系の熱履歴解析まではまだ検討できていない。本年度に行った研究内容を以下にまとめる。 (1)大分県山国〜小鹿田地域、鹿児島県北薩金鉱床、長崎県雲仙火山地域の野外地質調査および試料採集を行った。(2)測定鉱物(ジルコン、アパタイト、黒雲母、角閃石)を、テーブル選鉱、磁力選鉱、重液選鉱により選別した。(3)分離した試料(ジルコン、アパタイト)をテフロン等にマウントし、九州大学理学部のタンデム加速器を用いて重イオン照射した。(4)重イオンの通過により損傷した部分エッチングにより拡大した。さらに、それらの重イオントラックと交叉する結晶内部のウランの核分裂飛跡が検出されるまでエッチングした。(5)顕微鏡用のテレビ装置や顕微鏡描画装置とデジタイザーを用いて、検出された核分裂飛跡の全長を測定した。 本年度の研究では、今回開発した新手法が、年代の新しい鉱物試料のウランの核分裂飛跡検出に非常に有効であることが明らかになった。次年度には他の年代測定法と組み合わせることにより、複雑な熱履歴を有する地質岩体の解析を試みる。
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