研究概要 |
II-VI族半導体レーザ作製には、立方晶結晶であるIII-V族半導体基板上に歪量子井戸構造を作製することが不可欠であるが、Cdを含むバルク結晶が六方晶をとることから、当初は研究の対象が立方晶Zn(S,Se)三元混晶のみに限られていた。ところが我々が立方晶結晶上に立方晶ZnCdS、ZnCdSSeが成長することを初めて示したことで、Cdを含む(Zn,Cd)(S,Se)四元混晶により新しい各種レーザ構造設計が可能となった。この成果をもとに歪の効果を取り入れた理論手法によりGaP基板上にコヒーレント成長させた紫外レーザ構造を設計し、ZnS_<0.84>Se_<0.16>/Zn_<0.85>Cd_<0.15>S_<0.80>Se_<0.20>,Zn_<0.90>Cd_<0.10>S/Zn_<0.75>Cd_<0.25>S_<0.96>Se_<0.04>からなる歪量子井戸構造が、室温において約3.3eV(波長0.38μm)の紫外域の禁制帯幅を有し、しかもレーザの最も基本である光・キャリアの有効な閉じ込めが可能であることを提案した。 高安定な固体硫黄分子線セルを試作し、GaP基板上に高品質ZnCdSSe系多層構造を作製し、そのバンド構造と基礎発光特性を明らかにした。さらに、これを活性層とするMIS型発光ダイオードを試作し、77Kにおいて高輝度の近紫外(0.39μm)発光を初めて観測した。 p型ドーピングに関しては、マイクロ波窒素プラズマ法によりZnSへのドーピングを試みた。フォトルミネッセンス測定によりアクセプターレベルが形成されていることを確認したが、電気的には低抵抗p型層を得るには至っていない。今後、基板温度、II/VI比等の成長条件を最適化することで高濃度添加の条件が明らかにされるものと期待できる。
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