研究概要 |
新しく設計・製作した小型MBE・RHEED装置に、新しい試料ホルダーと電気的測定用超高真空室を結合させた。これによって、(1)構造・組成の解析、(2)表面電気伝導、(3)ホール効果、(4)電界効果の測定に加えて、(5)光伝導もin-situに測定可能なシステムとなった。これを用いて、表面の微視的な原子配列構造・電子状態とその巨視的な電気特性を曖昧さ無く直接的に関連づける研究を始めた。試料としてシリコンの(111)および(100)表面にAu,Ag,Al,Cu,In,Pb,Sn,Cs,K,Na等の各種金属を吸着させた表面、あるいは、それらのエピタクシャル超薄膜、さらに酸素等のガスを吸着させた表面を用いた。実験の結果、ホール効果の測定から1原子層より少ない量の金層の吸着によってキャリアー濃度が表面構造に敏感に依存して変化することや、電界効果が金属的な表面と半導体的な表面で異なること等を見いだした。期待したように電気特性がシリコン表面構造に敏感に依存していることが分かってきた。これによって、表面電気伝導の構造依存性に対する我々の解釈の正当性を与えることができた。つまり、表面空間電荷層が表面構造に依存して変化してキャリアー濃度が増減し、表面電気伝導に影響を与える。この様に、原子レベルでの構造と巨視的な電子特性を関連付ける研究によって、新しいデバイス開発につながる機能物性を見いだす可能性が実際に開けてきた。
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