第2年度目はナノプローブ電子線による構造と物性の評価のための新しい研究を3つ行った。一つはフィールドエミッション電子銃から放出される可干渉性のナノプローブ電子線を用いて、新しい構造解析技術であるコヒーレントナノビーム電子回折の実験を行ったことであり、2つ目はナノビーム電子線を用いてナノ加工の基礎実験、及び3つ目は平成6年度の研究計画(1)、(2)にあるように、特殊な試料電流ホルダーを自作することにより、ナノビーム電子線による試料誘起電流(EBIC)や試料吸収電流を測定することを行った。 第1のコヒーレント電子回折は1992年英国のブリストル大学でSiC単結晶に対して最初に試みられた電子線による構造解析法の新しい方法である。当研究者らは日立研究所との共同研究としてこの手法を半導体/セラミック界面(PbTe/MgO)に世界で最初に適用した。また、このコヒーレント電子回折に対応するマルチスライスシュミレーションプログラムを作製し、PbTeとMgOの格子のフィッティング状態を検出する方法を案出した。この成果は1994年夏にフランスで開催された第13回国際電子顕微鏡学会で招待講演に選ばれ発表され、また論文も投稿中である。
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