研究概要 |
1.平成6年度はまず実験装置を完成しその調整と動作確認を行った.(1)20K程度まで冷却可能なヘリウムガスフロー型の試料ホルダー・マニピュレータを製作した.(2)前年度製作した極高真空装置の調整を行い,容器内が空の状態で10^9Pa台,種々の測定装置をとりつけた状態でも10^8Paの到達圧力を達成した.(3)PID制御による自動消光型の偏光解析光学系を開発した.(4)本年度購入した希ガス純化装置を用いて気体導入系を製作した.(5)極微小電流低速電子線回析装置の調整をグラファイト単結晶を標準試料として別装置で行った. 2.実験.(1)偏光解析法でモニターしながらPt(111)試料表面をイオン衝撃,アニーリングにより清浄化した.試料表面の状態変化に対する自動消光制御系の追従性は充分な性能が得られた.(2)Xe/Pt(111)を対象として,三重点温度以上での吸着等温線を測定し,その系の多層成長の様子を観察した.本装置により広い圧力領域で測定が可能であることを確認した. 3現在の問題点は試料表面の正確な温度測定にある.アニール時の高温に耐える温度計としてPt/Pt-Rh熱電対を使用しているが,低温での熱電能が低いため充分な精度が得られていない.現在Pt抵抗温度計を併用する方法を検討中である.この点を解決後,臨界温度(あるいは三重点温度)で規格化した転移温度,飽和蒸気圧で規格化した転移圧力,吸着分子間相互作用と吸着分子下地間相互作用,格子定数等をパラメータとして,Ar,Kr,Xeなど異なる系での相転移の実験を予定しており.その比較対照から,まず現象論的な法則を導き出したい.それらの知見を基に,単原子層から多層膜における二次元/三次元転移,wetting転移,表面融解等の現象の解明を目的として研究を発展させる.
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