前年度に発生させた、波長750ナノメータのレーザの第二高調波(波長375ナノメータ)のパワーをさらに増加させるために、パワー蓄積共振器の性能向上、共振器の共振周波数の自動制御の精度向上のための電子回路改良を行い、12ミリワットを得た。次に本年度の主目的である柴外光発生のためにBBO結晶を用い、これに上記の第二高調波と波長750ナノメータの基本波の光とを同時に入射させ、波長250ナノメータの和周波数を発生させることを試みた。ビームプロフィールの最適化を行った結果、パワー2.8ナノワットの和周波数信号を得ることに成功した。これは連続発振レーザからの波長変換として、国内外を通じ初めての結果である。 なお、このパワー自身はまだ小さいが、本研究の主目的である小数個の原子の操作には十分な値であることは、別途計算した中空ファイバを用いる原子誘導のためのポテンシャル計算から明らかになった。 さらに、この柴外光の位相、波長を制御、掃引するために必須の素子としての光周波数コム発生器の性能を向上させるために、多重共振器化、導波路による波長多重化を行い、出力光パワーが15デジベル増加、側波帯発生の全範囲10テラヘルツ、を実現した。また、複数の光周波数コム発生器の出力光の間の位相同期、および長時間にわたる安定動作のために共振器長制御に成功した。 以上の結果より、本研究の主要な目的が達成されたと判断した。
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