研究概要 |
非線形周波数変換のための基本波レーザパワーを増加するためにコヒーレント重畳の技術を開発した。これを半導体レーザに適用した結果、複数の半導体レーザ間の位相誤差が0.25radまで抑圧された。また、コヒーレント重畳効率として85%が得られた。この値は従来の結果と比較すると最も高い値である。 次にシリコン原子の捕獲、単原子結晶成長などに用いるために波長252nmのコヒーレント光発生を試みた。このためにまず波長756nmのチタンサファイアレーザの第二高調波と基本波との和周波数を得る実験を行った。第二高調波発生には非線形光学結晶LBOを用いるが、入射基本波パワーを増大させるためにビルドアップ光共振器を設計し使用した。その結果50倍を越えるビルドアップ率が実現し、第二高調波パワー12mWを得た。 次に和周波数を得るために非線形光学結晶BBOを用いた。2つの光ビームの形状の最適化のための光学系を設計使用し、パワー2.8nWを得ることに成功した。なお、このパワー自身はまだ小さいが、本研究の主目的である少数個の原子の操作には十分な値であることは、別途計算した中空ファイバを用いる原子誘導のためのポテンシャル計算から明らかになった。 さらに、この紫外光の位相、波長を抑制、掃引するために必須の素子としての光周波数コム発生器の性能を向上させるために、多重共振器化、導波路による波長多重化を行い、出力光パワーが15dB増加、側波帯発生の全範囲10THz,を実現した。また、複数の光周波数コム発生器の出力光の間の位相同期、および長時間にわたる安定動作のために共振器長を抑制することに成功した。 以上の結果により、本研究の主要な目的が達成されたと判断した。
|