多重量子井戸構造における量子化準位の共鳴/非共鳴現象と光学定数との関係を明らかにすることにより、低い光励起強度でも大きな光非線形性を起こさせる可能性を実験的に検証することを目的として、GaAs/AlGaAs系非対称結合三重量子井戸構造を設計し、MBE法により試料を作製した。下部電極をとるためにシリコンデルタドープ層を挿入した。デルタドープ層のド-ピング特性とドープ層の厚さを評価するためにC-V法とFET構造のチャネル伝導を調べる方法を適用し、室温から液体ヘリウム温度における電子状態と伝導度との関係を調べた。この結果、デルタドープ層には量子化準位が存在することが明らかになった。三重量子井戸の構造としては、外部電界により三つの井戸の基底準位が共鳴するものと、三つの内の一つについて励起準位を用いるものの二種類を作製したが、双方の試料で光伝導の電界依存生を測定したところ、量子化準位を反映する複数のピークが得られた。この特性ピークエネルギーの電界依存生を詳細に調べた結果、井戸内励起子の束縛エネルギーは7-8meVであり、井戸間励起子の束縛エネルギーは2次元励起子より小さいことが明らかになった。次に、チタンサファイアレーザを用いて共鳴励起による光学定数の非線形性に関する実験を行ったところ、吸収係数の励起強度依存性に弱い飽和現象が現れることを確認することができた。今後、導波路形の試料を作製し検出感度を増加させ実験を行う予定である。
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