研究概要 |
過去3年間の調査研究などの結果をも融合しつつ,理論体系を構築した結果,非線形システムの感度解析の一般論に到達することが出来たが、これは,従来の諸理論、諸手法をすべて統一的に整理し,感度解析の本質を明らかにし,より効率的な手法を作り出す基になりうるものであるという意味で,重要な成果である.また,当該年度は研究最終年度であり,これまでに遂行してきた研究の成果を纏めて,国内外に発表して批判を仰ぎ、理論体系を完成させることも主たる目的であるが,これについては,本研究の枠組の中で,常微分方程式の初期値問題の精度保証に関する議論,自動微分・感度解析用のソフトウェアについて国内外で発表した. 感度解析の数学的な見方である「一点での特性に注目するだけでなく,その点の“近傍"におけるシステムの特性に注目する」という立場を,ソフトウェアのレベルでかなり忠実に実現すべく,通常の浮動小数点表示に数に限らず区間数・指数部長可変浮動小数点数・羃級数展開で表現された関数等,多様なデータ型が統一的に扱えるようなソフトウェアの試作・改良を現在も続行している. 単に「与えられたシステムの感度解析を行なう」に留まらず,当初計画にはなかった「感度解析が行ないやすいような,すなわち,エレメントの変動がシステム全体の特性に及ぼす影響が予知しやすいような,そのような構造の特徴付け」という問題意識が,研究を進める過程で得られ,直並列システム等の実際的な構造をそのようなものの例として位置づけたこと,および,随伴系の概念を数値計算の立場から再考し,連続系の随伴系と,連続モデルを離散化した系の随伴系との違いを明確に認識するに至ったことも,本研究の工学的意義を高めるものである.
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