研究概要 |
本研究は基板上に作成した脆性薄膜に微小球圧子を押し込むことにより薄膜の破壊強度を評価する方法を確立することを目的としたもので,本年度は3年継続の2年目である.本年度の主な研究成果は次の通りである. 1.パ-マロイ薄膜(単体)について,十字型微小試験片を用いて破壊強度を評価する実験に成功した. 2.SiO_2薄膜(単体)についても,十字型微小試験片を用いて破壊強度を評価する実験に成功した.その結果求められたSiO_2薄膜の破壊強度は,以前に行ったSiO_2薄膜の(SUS440Cステンレス鋼基板)に対する微小球圧子押し込み試験の結果より推定したSiO_2薄膜の破壊強度とほぼ一致することを確認した. 3.TiN薄膜(WC基板)についてX線による残留応力の値を知ることができた. 4.TiN薄膜(WC基板)について球圧子の球径をかえた微小球圧子押し込み試験を行い,微小破壊強度(リングクラック発生強度)を測定できた.その結果,微小破壊強度は2母数ワイブル分布にほぼ従うことを確認した. 5.3および4の結果より,微小破壊強度の実験値とワイブル分布に基づく有効面積の概念を用いて推定した薄膜の破壊強度は球圧子の球径依存性がみられた. 6.窒化硅素平板への微小球圧子押し込み試験から得られた微小破壊強度と通常の曲げ試験で得られる強度の関係を有効面積の概念で説明できない原因を明らかにするために,表面き裂からのリングクラック発生モデルを導入し,これにより微小破壊強度の分布と曲げ強度の分布の違いを定性的に説明できることを確認した. 7.球圧子押し込み試験から得られたリングクラック発生荷重P_fと球圧子半径Rの関係を破壊力学的に考察した結果,リングクラック発生モデルとき裂進展抵抗の下限値を考えることにより説明できることを確認した.
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