赤外線映像による材料強度等の評価手法は従来の実験応力解析法、あるいは非破壊検査法等とは原理を異にする新しい方法で、研究代表者らは独自のアイデアによりその可能性を探ってきた。本研究は、これまでの研究をさらに発展させ、実験-計算ハイブリッド手法を用いた新たな欠陥検知システムの開発を行なうことを目的とする研究である。平成5年度の研究成果を具体的に示せば、 (1)赤外線映像装置から得られる熱画像データを画像処理して、欠陥を鮮明に浮き上がらせるための画像処理エキスパートシステムを開発した。 (2)鋼構造物中のき裂を検知するための加熱法は高周波加熱法、ハニカム構造の接着不良を検知するための加熱法はシリコンラバーヒータ加熱法がそれぞれ最も適した加熱法であることを明らかにした。 (3)(1)と(2)の研究成果を用いることにより、鋼構造物中2.0mm以上の疲労き裂の検知を可能とした。また、ハニカム構造のハニカムコアと同等の大きさの接着不良(欠陥)の検知を可能とした。 (4)建築構造物の壁面タイルの剥離、また欠陥部の検知の基本条件を定めるため、各種自然条件(四季の変化、日射量の変化、風速の変化、タイルの日射吸収率等)を取り入れられる欠陥を持つ壁の3次元熱伝導シミュレーションシステムを開発した。 (5)開発したシステムを用いて剥離欠陥部を持つ壁の3次元モデルの解析を行ない、壁表面の温度分布パターンに対して、最も影響する因子を抽出できた。その結果から、赤外線映像装置を用いて建築構造物の壁面タイルの剥離欠陥部を容易に検知できる最適条件を示すことができた。
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