研究概要 |
本研究は,損傷力学的手法により高温構造物の劣化・破壊の定量的評価技術を開発することを目的とする。このため,高温構造材料の組織変化,微視的空隙の発生,その合体による巨視き裂の発生・発達を損傷力学によってモデル化し,これを有限要素法プログラムに組込み,局所的損傷・破壊過程を解析する方法を研究する。 本年度の研究実績は次のとおりである。 1.損傷力学に基づく損傷・破壊解析法として,はじめに代表的な高温機器材料である316ステンレス鋼の弾塑性損傷過程のモデル化を研究した。本講座既設の複合負荷電気-油圧サーボ材料試験機によって16本の平滑ならびに円周切欠試験片の弾塑性損傷実験を行い,微小空隙の発達に伴う弾性係数の低下,ポアソン比の変化を求め,これから力学的損傷変数Dを同定して,材料の損傷状態を記述した。 2.損傷変数Dは,損傷の進行に伴う弾性定数の変化からだけでなく,損傷状態の微視的観察結果とも関連づけられる。このため,現在高温機器の寿命評価パラメータとして広く用いられているA-パラメータ(粒界空隙率)と損傷変数Dの間の関係についても議論し,いくつかのA-D関係を提案した。 3.以上の研究と同時に,損傷力学と有限要素法に基づく局所的損傷・破壊解析法を開発する目的から,汎用有限要素法に既存のクリープ損傷発展式を組込み,クリープき裂進展速度の有限要素依存とその原因,対策について検討した。 4.本年度購入した引張り-ねじり複合負荷試験機を用いて,多軸クリープ実験を実施中である。
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