研究概要 |
工業用純鉄膜を用い、膜厚100,50及び40μmの疲労き裂発生と伝ぱ挙動に分けて、疲労破壊特性に及ぼす膜厚効果を検討した。その成果を以下に要約する。1。レーザインジケータとビデオマイクロスコープユニットを組み込んだ膜変位計測システム(膜の凹凸、膜厚さおよび接着層厚さの非破壊・精密測定)を完成させ、膜疲労試験法の精度を上げることができた。2。母材の円孔を覆うように膜を接着し、母材が負荷を受ける時膜内応力は一様であり、また膜内き裂の応力拡大係数はき裂長さの大部分の領域で一定となること、さらにこれらの力学量において3種の膜厚による差はない解析結果を得た。これにより、本試験法は膜厚効果を調べる手段として有効であった。3。疲労き裂発生過程において、薄い膜ではすべりおよび微小き裂の発生は早く、また膜表面のすべりは直線状のき裂周辺に集中した。一方、厚い膜では表面の方々のすべりを屈曲するき裂となり、表面すべりのみならず内部結晶粒の変形のし易さにも影響していた。4。各膜厚さの疲労き裂伝ぱ速度を応力拡大係数幅△Kを用いて整理すれば、実験点は両対数目盛で直線に近い値となった。しかし、薄い膜ほど疲労き裂先端での塑性変形が生じ易いためき裂閉口現象が著しかった。このき裂閉口現象を考慮すると、薄い膜ほど疲労き裂伝ぱが生じ易くなり、膜厚による相違が顕著になった。5。厚さ100μmの膜材のき裂開口変位分布の実測値から評価した応力拡大係数幅ΔKestと膜疲労き裂伝ぱ速度の関係は、有効応力拡大係数幅ΔKeffによるバルク材疲労き裂伝ぱ速度の整理の結果とほぼ一致した。
|