研究概要 |
大きさが数mm以下の微小な機械であるマイクロメカニズムを高い加工精度・信頼性・生産性をもって製作するためにはナノインプロセス計測が必要不可欠である。そこで本研究は,3次元物体形状からのレーザ散乱光の位相情報を回復することによって,微細加工形状をナノメートル(nm)の分解能で高速に再生することが可能な光学的フーリエ変換に基づく光逆散乱位相法を構築することである。 当該年度の研究成果をまとめると以下のとうりである。 (1)光学的フーリエ変換理論に基づいて位相回復理論の展開を行い,境界条件を考慮した場合の近似解に対する計算機処理のための位相回復アルゴリズムを構築した。すなわち,平行平面波を指数関数減少フィルタに通した場合と通さない場合に得られる微小物体の2つのフーリエ変換像から,位相を抽出し画像を回復するアルゴリズムをC言語を用いてワークステーションに構築した。 (2)上記の位相回復アルゴリズムを用いて三角形,台形,非対称三角形の代表的な微細溝形状の位相回復の実験を計算機で行うことによって,本測定法の誤差特性を解析した。その結果,誤差特性は形状の代表値であるピッチpと高さHに密接に関係しており,微細形状を高精度に位相回復するためには,最適な指数関数減少フィルタの係数YCが存在し,形状によってYCは異なることが分かった。(3)高さH,ピッチP,フィルタ係数YCからなる特性値YC(P/H)から,誤差が最小になる指数関数減少フィルタの係数を求めることができ,このフィルタ係数を用いることによって,光逆散乱位相法はナノメートルオーダの分解能で微細溝形状の位相回復を可能にすることが明らかになった。 (4)レーザ光の可干渉な平行平面波を拡大および縮小できる光学系,指数関数減少フィルタの係数を自由に制御できる液晶素子,広範囲にフーリエ変換像を検出できる移動可能なCCDエリアセンサなどからなる光逆散乱位相光学系の設計を行った。
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