研究概要 |
一層精密化、微細化する微小な機械であるマイクロメカニズムをフレキシブルにしかも高い加工精度、信頼性、生産性をもって製作するためにはナノメータオーダの測定分解能を有し,加工状態をリアルタイムで監視することが可能なナノインプロセス計測技術が必要不可欠となる。そこで本研究は、物体表面で回折、散乱したレーザ光の位相情報を回復することによって数μmから数mmの微小物体形状をナノメータオーダの分解能をもって3次元的に再生することができる逆散乱位相法を確立し、ナノインプロセス計測へ適用することを目的としたものである。すなわち光波動位相情報の伝播特性を解析することによって位相回復理論を構築し、また物体光と変調光から微小物体形状の位相分布を抽出できる逆散乱位相光学系を製作し、得られた位相情報から3次元物体形状を再生することによって本測定法の有効性を検証する。 前年度の光学的フーリエ変換に基づく逆散乱位相情報抽出アルゴリズムの構築と逆散乱位相法の適用範囲の検討によって、測定精度に影響をおよぼす主な因子は、微細形状のピッチ(幅)w、高さh、レーザスポットサイズd、指数減少フィルタの係数c、サンプリング数nであることを明らかにした。本年度はこれらの成果に基づき微細3次元形状測定システムを製作し逆散乱位相法の検証実験を行った。当該年度の研究成果をまとめると以下のようになる. (1)逆散乱位相法に基づく微細3次元形状測定システムの構築 短波長レーザとしてArイオンレーザ(波長488nm,160mw)を光源に用い,物体からの直接光と指数減少フィルタを通して得られる変調光を測定する逆散乱位相光学系を製作した.光学系の構成は、Arイオンレーザの平行平面波を拡大および縮小する光学系,シュミレータによって測定に最適な指数係数を決定しその濃淡画像を表示したモニタ画像を撮影することによって作成した指数フィルタおよび広範囲のフーリエ変換像を検出できる走査可能なCCDエリアセンサなどから成っている.さらに,測定によって得られた位相情報から微小物体3次元形状を再生するためのデータ処理ソフトウェアをエンジニアリングワークステーション上に構築した。 (2)三角形微細溝形状の形状回復実験 本測定装置を研究室のクリーンルーム(クラス10以下)内に設置し、刃先角170度の単結晶ダイヤモンドバイトを用いて作成した。ピッチ10μm,深さ0.4μmの三角形微細溝形状の形状回復実験を行った.この実験において、サブミクロンオーダの微細形状が物体光と指数型光減少フィルタを通して得られた変調光から再生できることを明らかにし,提案する逆散乱位相法の有効性を定量的に示した.
|