研究概要 |
本年度の研究内容およびその成果は以下の通りである. (1)液晶高分子の構成式の検討 HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)の50wt%および60wt%水溶液に対して,従来のDoiモデルよりも溶媒と液晶分子の相互作用の項を考慮した修正Doiモデルのほうが,高せん断速度領域で粘度曲線との良好な一致が得られることがわかった. (2)TIFモデルによるシミュレーション Leslie-Ericksenモデルに高粘性近似を用いて導かれたモデル(TIFモデル)により,円柱を有する平行平板間流れのシミュレーションを行った.パラメータλ(>1)が1に近づくと流れ方向に分子が向いた領域が円柱後方に長くつづくことがわかった.これは,実験で得られている結果と一致する.また,円柱列を通る流れの計算も行った.その結果,二次流れが物性に大きく影響を受けることが明らとなった. (3)Doiモデルによるシミュレーション 修正Doiモデルにより,円柱を有する平行平板間流れのシミュレーションを行った.TIFモデルの結果と同様の円柱後方の分子が配向した領域の存在が確認された.さらに,拡大流れによって回転した分子が中心軸付近ではゆっくりと回転するために,円柱のかなり後方まで配向の乱れが残ることが明らかとなった. (4)偏光顕微鏡による配向の観察 シミュレーション結果と実際の配向状態の比較を行うために,HPC水溶液により円柱を有する平行平板流路内の流れの観察を行った.それより,シミュレーションで得られた配向状態と定性的に一致していると考えられる結果を得た.また,流動中に奇妙な縞が観察され,流動により何らかの構造ができていることが推察された.
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