研究概要 |
1.翼列流れの数値シミュレーション 強い逆流を含む発達した旋回失速の二次元NS数値シミュレーションを行った.動翼列上流に発達する強制渦と静翼列内の循環流れとが均衡して軸方向に並び失速セルを形成し,動翼移動列方向に伝播する様相が得られた.伝播速度は動翼速度の55%程度で,圧縮機実験結果に近いこと,セル内では3-4翼間に及ぶ強い逆流域が生じることなど,全作動域での非定常流れ場を把握した.圧縮機通路の収縮や遷音速作動域に現れる衝撃波の影響も明らかになり,実機設計に貢献する資料を得た. 2.失速流れの計測 深い失速運転ではセル通過により順流から逆流への変化が現れるため,2象限の測定角度を有するスプリット型薄膜プローブを用いて,動翼前後方,静翼後方での流れ計測を行った.動翼前方チップ近傍でセル内部に強い逆流が生じ,周速度成分は動翼周速を上回り,計算結果に見られるような渦構造が確認された.セル相対の位相固定平均により,その3次元構造を明らかにした.動翼前方では失速域がチップ側へ偏り三次元的分布を示すのに対し,静翼後方では比較的一様な変動パターンを示す.また静翼後方の旋回流パターンは計算結果ほど顕著には見られない.実機での通路収縮がこの差異の一因と考えられ,準三次元の計算を実施した. 3.三次元計測 二線式スプリット複合型薄膜プローブを試作し,動翼列後方の三次元乱流計測を実施した.乱れ度や翼先端漏れなどの二次流れの圧縮機負荷による分布形態の変遷を明らかにし,圧縮機設計における乱れの半径方向混合の評価を可能にしたことと共に,失速初生へのトリガとなる構造を解く基礎資料を得た. 4.旋回失速のアクティブ制御 小型軸流機を用いて失速遅延の実験を行った.動翼上流のハブ壁に放射状に設置したフラップを油圧駆動で開いてハブ側を失速させ,チップ側からの失速の発達を抑制することで安定作動域の拡大を図るハブストール方式を考案し,その実効性を調べた.チップ側軸流速を一定にするようにフラップ開度を制御し,12%の作動域改善を得た.ジェット噴射との併用でさらなる改善を図り得る見通しを得た.
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