ロケットによって火星探査機(火星ローバー)を火星に軟着陸させ、自由に走行させながら火星の映象を地上に送信し、また車体に搭載した理学観測装置により数々の理学観察をするいわゆる火星ローバーの開発が現在世界的な注目を浴びている.本研究は、従来まったく試みられたことのない新しい形態の4輪走行車を実際に試作し、地上走行実験と運動解析シミュレータで車体構造と運動特性の最適化を計り、さらに最小限のセンサと制御計算機を装備した自律走行を試み、実際の宇宙開発に使用できる火星ローバーを実現しようとするものである. 本年度は、質量35Kg、長さ×巾×高さが1100mm×900mm×500mmの第1次試作走行車を製作し、基本的な走行実験を試みた。本試作機は、4輪を通常の車輪形状とは異なり進行方向に対して菱形に配置した形態をなし、しかもタイヤの形状が球形でモータや駆動装置をそのタイヤ内部に配備して全体の重心を低くし、特別な姿勢制御無しでも凹凸面で安定性を高める構造となっている。この試作走行車により任意の凹凸面地形に適応する走行実験を行った。その結果約250mmの段差を踏破するなど高い対地適応性が生成できていることが確認できた。ただし、姿勢によってはサスペンションの動作特性との関係で不安定な姿勢となる場合があること、障害の状態によっては踏破し難い状況が生ずることもあることなども明確になったため、来年度に引続き検討を行ってゆく予定である。なお、これらの効果の解析的な検討は運動解析用ソフトADAMSによっても実施した。
|