電界を直接計測する方式の1MV級超広帯域分圧器を設計、試作した。この分圧器は1mの間隔を隔てた平板電極が向かい合った形状をしている。上側電極に被測定高電圧を印加して電極間に印加電圧に比例した電界を発生させ、それを下側電極中央部に埋め込んだ平板形静電アンテナで電圧信号に変換し、下側電極直下のシールドボックス内の10ビットディジタイザで直ちにディジタル化する。ディジタイザの制御は外部からディジタル光リンクを通して行い、得られたデータも同様にディジタル伝送する方式とした。 上記の分圧器の電極形状を決定するに先立ち、周囲の障害物が下側平板中央の電界を乱す度合いを静電界解析によって評価し、それにもとづいて、障害物の影響を受けにくいよう電極形状を決定した。広帯域静電アンテナには、経時変化の観点を重視して、心臓部に高周波特性のやや悪いキャパシタを使用することにしたため、商用周波数電界からさい断波雷インパルス領域までを2つの帯域に分割して扱った。その結果、静電アンテナとしては、0.8Hzから40MHzまでの帯域のものが実現された。 以上の個々の要素をシステムとして組み立てると、総合特性は当然、単独の時よりも悪化する。それでも標準的な測定回路でシステムの応答時間を測定したところ、5〜6nsという、これまでに低インピーダンスの抵抗分圧器で実現された最高性能のものに匹敵する数値が得られた。言うまでもなく、新たに試作した分圧器の入力インピーダンスは僅か数pFと極めて高いのが、従来の高性能分圧器と異なる大きな特徴である。 電界を利用した分圧器の弱点は、周囲の障害物により、精度が影響され易いことである。その程度を実験的に調べた結果、高さ約2mの今回試作した分圧器から障害物を7m以上離せば、±0.5%の精度を維持できることがわかった。 以上の成果の一部は、1993年8月の国際会議(高電圧工学国際会議、横浜)で発表した。
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