前年度に設計・製作した、電界の直接計測による方式の1MV級プロトタイプ分圧器を一部に用いた高電圧測定システムの分圧比、応答特性の測定を実施した。一般に、高インピーダンスの分圧器の分圧比を、分圧器の要素ごとのインピーダンスを低周波数の交流で測定することを通じて精密に算出することは、測定用リ-ド線の有する漂遊容量の影響を受けるために容易ではない。高精度の3次元電界計算と、低電圧アームのインピーダンスの実測を併用すれば、比較測定によらずに分圧比を推定することは実用上可能になると思われる。今回は、低インピーダンス分圧器との比較測定により、分圧比を決定した。 測定された直角波応答特性は、制動抵抗200Ωのもとで応答時間5.5ns、整定時間75nsと、最高性能の分圧器と同等の性能を示し、かつ高入力インピーダンスの分圧器としては、従来にない帯域の広さを持つことが実証された。これらは1994年11月に制定された高電圧測定に関するIEC新規格において、標準測定システムのうち、最も高性能のものに要求される性能を十分に上回っている。 この方式の高電圧測定システムは、周囲の物体の存在により電界が乱されると、分圧比に影響が出てくるのが問題である。この影響を電界計算、および実験によって評価した。IEC新規格では、最高性能の標準分圧器の精度として±0.5%を要求している。今回の評価で、分圧器と被測定部分をつなぐリ-ド線の高さは測定精度にあまり影響しないことが分かった。また、今回製作した1MV級システムでは、インパルス電圧発生装置や高電圧のかかる物体からは7m以上、接地された物体や壁からは4m以上離せば高精度を維持できることが分かった。これらの条件は、大型の高電圧実験室ならば十分に実現できるので、今回設計・製作したシステムの実用性が確かめられた。
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