研究概要 |
同軸形状電力ケーブルの絶縁体中に蓄積される空間電荷分布を測定できるパルス静電応力法が本研究グループで開発されている。そこで本研究は電荷分布の位置分解能が5%以内で測定できる装置を開発するとことに研究目的をおいた。この目的を達成するために次の3点の技術開発を行い、電荷分布の5%以内位置分解能が達成された。 (1)低インピーダンス(50Ω)の高電圧ナノ・パルス発生装置の開発 高電圧スイッチには水銀リレーを使いチャタリングを防ぎ、高速の高電圧分圧器は分圧抵抗を同軸状に配列する特殊な形状に改良、さらにパルス電圧発生装置全体を金属遮蔽し雑音の飛散を防いだ。その結果、希望としたナノ・パルス高電圧(立上時間:3nsec,パルス幅:50nsec、電圧:4kV)を発生することが出来た。 (2)ナノ・パルス圧力波の検出の開発 パルス圧力の検出は高分子圧電素子(PVDF:厚さ4〜9μm)を使用し、測定分解能の向上を図った。この場合、パルス音圧波は多くの異材料中を伝搬するので、各材料の音響インピーダンスを測定し、その音響的整合を十分に配慮した。その結果、初期の目的である空間電荷分布の位置分解能5%以内で測定が実現できた。 (3)圧力波の減衰と歪の補正 高い周波数成分を持つパルス圧力波は、高分子絶縁材料中を伝搬するとき粘弾性損失のため減衰するので、正確な電荷分布の測定は困難である。そこで、パルス圧力波の伝搬の伝達関数を求め、この伝達関数を使ってデコンボリューション法のデータ処理を行い、波形歪の補正として正確な電荷分布を算出する方法を開発した。
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