研究概要 |
金属を上回る非常に低い電気抵抗を示すという報告(日野他:電気学会論文誌A,110,630(‘90))のあるヘテロ構造LB膜における電気伝導現象の解明を目的に調査研究を行った。 アラキン酸Cd-C15TCNQヘテロLB膜を作製し、超低抵抗有機導電膜の実現を目指した。累積比、累積層数対静電容量の測定結果からヘテロ膜を構成するこれら2種類の単分子LB膜はそれぞれ1分子層ずつ規則的に積層されていることが明らかとなった。しかしC15TCNQ膜を超低抵抗現象に必要と考えられる完全なZ型膜とする事はできなかった。また、今のところヘテロLB膜の電気抵抗に低下の兆候は見られていない。日野らによれば超低抵抗にはZ型C15TCNQ膜の有する自発分極が重要な役割を果たしており、本研究で作製したC15TCNQ膜の不完全さが低電気抵抗の発現しない原因と考えることもできるが、この点については今のところ明らかでない。 これとは別に、本研究の中でTCNQ膜における電気的スイッチング現象が見出された。この現象は、TCNQ分子が下層液中に含まれていたCdと錯体を形成し、それが電界によって相変化するのが原因と考えられる。超低抵抗現象と併せ有機導電性膜の新しい機能性として注目される。 平成7年度は、今年度の研究を継続しC15TCNQ膜の膜質の改善を通じてヘテロLB膜における超低抵抗現象の発現を図るとともにTCNQ以外の有極性有機単分子膜の作製とそれを用いたヘテロLB膜の作製を行う。また、これと併せて新たに見出されたスイッチング現象に関する研究を行う。
|