本研究は、Ga_<1-X>In_XAs/GaInAsP/InP系歪量子薄膜、量子細線および量子箱構造を活性層とする半導体レーザを作製し、その特性を理論および実験の両面より明らかにすることによって、高性能半導体レーザの実現を目指して行った。 本研究では、現在までに以下に掲げる成果を得ており、当初の目標をほぼ達成した。 ・疑似量子細線レーザを作製し、その温度特性を測定することで、従来の量子薄膜レーザとの性能比較を行った。 ・電子ビーム露光法とECRドライエッチング法により、アスペクト比6以上におよぶ20-30nm幅のGaInAs/GaInAsP多重量子細線および量子箱構造を作製し、PL測定法により、この作製法による物理的加工損傷は軽微であることを実証した。 ・測定温度4Kにおいて、GaInAs/GaInAsP系単層歪量子箱構造からの0次元量子箱効果によるPLエネルギーシフトを観測した。 ・Ga_<0.67>In_<0.33>As/GaInAsP/InP系引っ張り歪量子箱レーザを作製し、これのレーザ動作を初めて観測した。活性層としてサイズ30nm、厚さ12nmの量子構造を周期70nmにて作製した。しきい値電流密度は、測定温度77K、パルス電流注入において、7.6KA/cm^2が得られた。 ・レーザ動作時における自然放出光スペクトルを測定することにより、無歪、引っ張り歪および圧縮歪構造を活性層とするSCH構造量子井戸レーザにおけるキャリア捕獲時間を調べ、各活性構造において異なるキャリア捕獲時間となることを明らかにした。
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