平成5年度の研究実績の概要をまとめると、以下のようになる。 1.スパッタ装置の改良と薄膜形成条件の最適化 現有の装置を改良してデータの再現性を向上させるとともに、薄膜特性とプロセス条件の比較検討を行い、薄膜形成の最適条件を見いだした。炭素と珪素から成る複合ターゲットを用いたスパッタ法において、およそ800℃という炭化珪素としては低い基板温度で多結晶薄膜が得られる条件を見いだし、実用化への手がかりとすることができた。この結果に関してはすでに電子情報通信学会の研究会や炭化珪素に関する国際会議で発表した。 2.SiC/Siヘテロ接合の形成と特性解析 トランジスタのエミッタ接合と同じ条件でヘテロ接合を形成し、その電流輸送機構を解明するとともに、エミッタ接合としての有効性を調べた。ダイオードの電流電圧特性は、多結晶薄膜を用いているにもかかわらず、理想係数が1.6前後であり、市販の単結晶珪素を用いた素子に近い値が得られた。この結果に関しては、すでに炭化珪素に関する国際会議で報告している。 3.炭化珪素薄膜トランジスタの試作 薄膜トランジスタの構成要素であるゲート絶縁膜の形成、電極加工技術、チャンネル層である多結晶炭化珪素薄膜の加工技術を開発した。ゲート絶縁膜としては気相成長法により二酸化珪素薄膜を形成した。また、化学的に極めて安定な化合物である炭化珪素薄膜に対する加工方法として、プラズマを利用した反応性エッチング法を開発し、フォトリソグラフィー技術と併せて素子作成のための基本的な要件を満たすことができた。 4.その他関連する実績 本研究において開発した技術を利用して小型流量センサを試作した。この結果については、第12回「センサの基礎と応用」シンポジウムにおいて発表する運びとなっている。(以上)
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