本研究の最終年度として、当初の目的を果たすべく以下の3研究を行った。(1)デジタルエッチングにおける自己停止反応を確立するため、前年度に引続き、XeF_2の昇華で生じたフッ素(F)原子/水素終端Si(111)表面反応のFTIR/ATR-XPS観察から反応機構研究を行い、次の重要な知見を得た。F原子は少量暴露では、終端水素はF原子との反応で除去されず、Si(111)の最上層(subsurface)のセル中に単体として存在し、その半分は原子状で存在し、他の半分はH-Si結合の背後からSiと結合する。更にフッ素暴露ではSi-Fx(X=1-3)の高次反応によりエッチングが起こる。しかし次にF_2分子を水素終端Si(111)表面に暴露した所、10^5Lでは水素が全て除去されてもSiは最表層しかフッ化されず、Si-Fで終端されていることが分り、自己停止反応が起こったと考えられる。(2)微細SiドットへのPN接合形成で不可欠なイオン注入で懸念される結晶欠陥をTEMで調べた。SiドットはSiO_2をマスクにEB露光とプラズマエッチングで形成し、そのドットを酸化により微細化した。AsとBF_2のイオン注入に対し、微小結晶と双晶の欠陥が観察されたが、Asの場合、20nmのドットでは欠陥は一切見られず、アニール過程で欠陥が拡散消滅したと考えられる。(3)縦型ドットPN接合は、LOCOSで形成され、約100A露出面にAlの選択CVDで電極を付け、これをAFMのAu蒸着チップにより接触させてI-V特性を測ったが、量子効果は観察されなかった。そこでSOIウェハを用いた横型で微細SiドットPN接合を形成した。その結果、幅が50nmの細線では室温で3V付近で負性抵抗が観察され、これはバンド幅の拡大によるものと考えられる。また温度特性では100Kで複雑な屈曲が現われていたが解釈はできていない。
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