最近、CuInSe_2系薄膜型太陽電池はその変換効率が17.6%に達するなど目ざましい進展がみられている。しかし現状では、製造設備が高価、製造工程も複雑で改善が必要など、電力用として上記太陽電池を本格的に普及するための高効率化・低コスト化は実現されていない。これは、多結晶化プロセスなどCuInSe_2の薄膜結晶成長に関する研究が依然として進んでいない点に第一の原因がある。 以上の情況を考慮し前年度に引き続きCuInSe_2の成膜法を研究した。その結果、Cu-In-Seプレカーサを、線状熱源を用いてゾーン移動再結晶化する方法(TZR法と呼ぶ)が、低温で結晶粒径の大きなCuInSe_2の成膜法として優れていることを明らかにした。TZR法で作製されたCuInSe_2膜では、同一合成条件で比較し、通常のファーネス加熱の場合の数倍以上、さらにインジウム溶媒を用いることにより一桁以上大きい6μm(最大)の結晶粒径が得られた。したがって本提案の方法によれば変換効率や開放端電圧の一層の増大が期待できる。 また、CuInSe_2合成過程を高温X線回折法によりその場解析するとともに、形成された膜構造との関連を概ね把握できた。 一方、溶液析出法を用いて、窓層となるn型CdS薄膜や透明電極層となる導電性ZnO薄膜の作製も進めた。 さらに、「太陽電池用CuInSe_2系薄膜の作製と評価」と題する研究会を企画すると共に、平成6年10月、本学部において開催した。 今後二年間本研究を続け、Cu-In-Seプレカーサ構造の精密制御及び、最適構造プレカーサからのCuInSe_2膜合成の技術確立を計る。その後それらの結果に参考に、CuInSe_2の実用的成膜装置を提案したい。
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