研究概要 |
最近、CuInSe_2系薄膜型太陽電池はその変換効率が17.6%に達するなど目ざましい進展がみられている。しかし、電力用として上記太陽電池を本格的に普及するための高効率化・低コスト化はまだ実現されていない。 1.帯域移動加熱による成膜法の研究 (1)Cu-In-Seプレカーサの帯域移動加熱による固相セレン化法を検討し、本方法が、通常のファーネス加熱の場合に比べ、低温で結晶粒径の大きな薄膜が得られる点で優れていることを明らかにした。 (2)高温X線回折法によりCuInSe_2の生成過程をその場観察し、反応過程が、プレカーサ構造(Cu/In,Se/(Cu+In),Cu-Inの状態など)により著しく異なることを見いだした。 (3)Cu-Inプレカーサのセレン飽和蒸気圧下での気相セレン化法を検討し、プレカーサ構造と生成されるCuInSe_2膜構造(優先配向性、粒径、異相の有無など)との関連を明らかにした。 2.薄膜型太陽電池用新材料系の研究 (4)光活性層用材料系として、(Zn、Cu,In)(S,Se)_2を提案すると共に、まずCuInS_2を取り上げ、気相硫化法による薄膜作製を検討し単相膜を得るための条件を把握した。 (5)窓層となるn型CdSの溶液析出膜の特性改善を検討し、六方晶ウルツアイト相のみからなる薄膜作製条件を把握した。 今後、Zn-Cu-In-S-Seプレカーサ構造の最適化を行うと共に、帯域移動加熱固相セレン化法の完成度を高めるよう研究展開を計る。また、その結果に基づき、高効率・低コストな実用的成膜装置を提案する。
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