研究概要 |
マイクロ波励起有機金属気相成長法を提案し、InN単結晶薄膜を始め、新しい窒化物半導体であるInAINについて成長実験を試み、それらの基礎物性を明らかにしてきたので、その概要を述べる。InN単結晶薄膜作製に成功して以来、その結晶性改善のため、ポストアニール実験を行い、X線ロッキングカーブ半値幅の大幅改善を確認するとともに、サファイア基板上におけるエピタキシャル成長軸方向をX線、電子線回折により決定した。また、将来のオプトエレクトロニクスへの応用を考えた場合、サファイア基板に代わり、半導体結晶上への成長が不可欠になるが、GaPおよびGaAs上への成長を試み、単結晶薄膜を得た。成長直前の窒素プラズマ照射が有効であることを明らかにし、成長初期過程を考察した。将来のデバイス作製時には、結晶表面の熱的安定性が問題になるが、真空および窒素雰囲気中での高温加熱による表面構造の変化を明らかにするとともに、アニールによる表面構造の変化を走査トネル顕微鏡により、追求した。さらに、InN,AINのバンドギャップを液体ヘリウム温度から室温まで測定し、その温度依存性を明らかにした。InN,GaN,AINの窒化物半導体は、他のIII-V族化合物半導体と比較し、相対的変化が小さいことが判明し、良好な温度依存性を有するデバイス実現の可能性を指摘した。他のIII-V族化合物半導体のバンドギャップ温度依存性に関するデータを比較検討した結果、構成元素の組合せとの間に顕著な規則性があることを初めて見いだした。InAIN系の単結晶薄膜は今まで報告されていなかったが、AI組成14%以下にて、単結晶薄膜作製が可能であり、その成長条件を明らかにし、X線回折、バンドギャップ測定から確認し、混晶組成の制御が可能となった。電子線回折により単結晶であることを初めて確認するとともに、電気的光学的特性を調べた。以上の結果は、本研究で初めて得られたものであり、すでに公表されている。
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