三カ年計画の初年度に当たる本年度は、電気絶縁特性の優れた高分子薄膜表面での各種帯電とそれに伴う静電気放電(ESD)の観測を行った。特に、本年は、帯電した誘導体薄膜表面を一端、接地あるいは浮いた状況で金属薄膜で覆った後にそれを剥離する際の静電気放電について放電電流、表面電位の変化、静電気放電後の表面の帯電状況などを詳細に検討した。剥離面の裏面の一部に導体が付着している場合、剥離場所が裏面導体の端になったとき、極めて強い静電気放電が発生すること、その結果剥離することで誘電体表面での帯電特性において極性が反転することなどが明らかとなった。一方、裏面導体がない場合には極めて細かい静電気放電があること、導体がある場合(剥離場所が端ではない時)にはやや大きく鱗上の放電痕跡が観測されること、端での静電気放電開始直前に大きな表面電位変化が観測されることなどを明らかにすることができた。また、この静電気放電時に電磁雑音(1GHz以上の高周波成分が確認された)が表面電流測定、ループアンテナ観測、モノポールアンテナ観測などで確認された。極めて高い周波数成分が観測されたことは、静電気放電が今後益々電子機器の誤動作、更には、破損などの主原因になる可能性が高いことを示唆している。また、これら静電気放電による内部での帯電状態の変化についても熱刺激電流(TSDC)観測などでも実測されており、興味深い現象である。現在誘電体に対する各種除電対策、具体的には、放電処理などの表面処理により表面の電荷寿命や除電の安定性などについても検討中である。水の濡れ角度測定では大きな差が認められており、今後の大きな研究課題となった。
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