本研究は、平成5年度より3カ年計画で開始されたものである。最終年度に当たる今年度は、これまでの研究のまとめとして、いくつかの研究においてデータの性能向上、補足を含めた研究を行った。これまでの研究成果をまとめると次のようになる。誘電体中の深さ方向の空間電荷分布測定としては、高分子ピエゾ材料・PVDFを用いたナノ秒パルス衝撃波法を新たに開発し、更にその分解能向上を図り、雑音レベル低域、測定セルの堅牢化、雑音進入経路の遮断などによって当初の分解能20μmから7μmに向上することができ、表面帯電診断に利用可能となった。帯電防止表面処理の効果を空間電荷分布測定として調べたところ、測定信号に明らかな有意差が認められた。但し、分解能が不測として空間電荷密度分布そのものを正確に知ることはできなかった。今後分解能を1μm以下にする必要があることも明確にあった。静電気放電の研究では、静電誘導と電磁誘導との間には明らかに違いがあること、極めて高速の物理現象が存在していることを裏づける測定結果が現れたこと、極性依存性が明らかに存在していることなどが新たに判明した。帯電防止処理としては、減圧空気の下での交流プラズマに曝した表面の帯電防止効果を当初調べていたが、更に、空気以外に、アルゴンガスプラズマに曝した高分子表面の各種特性、大気圧力下でのプラズマ処理効果なども調べた。プラズマ媒体が空気とアルゴンとでの相違は観測範囲では認められなかったことから、本表面処理については、酸素イオンの効果は少ないものと想像される。大気圧力下での放電処理では効果が少ないこと、プラズマ処理後に、一週間保存して表面の変化を調べ、処理効果の減少が確認できた。水の接触角測定では、放電プラズマ処理効果の検出感度が高いことが認められた。表面にコロナ荷電をすると見かけ上の表面電荷密度分布では変化が少ないようであっても、熱刺激電流観測では、プラズマ処理によってかなりの変化が現れ、表面処理効果への感度は十分高いことなどが明らかとなり、清浄環境と静電気問題への足がかりが出来たものといえ、今後の静電気対策上、極めて重要な知見が本研究で得られた。
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