銅丸棒(直径25mm長さ50mm)の長手方向に幅3mm深さ9mmのトレンチを作り、これをホローカソードとして動作させる放電管を試作した。100mA程度の電流の直流放電により、トレンチ中には光吸収法で密度を測定するのに十分な量の銅蒸気が陰極スパッタリングで生成されることが分かった。トレンチを通して波長578.2nmのリング色素レーザー光を通過させることにより、銅レーザー下準位である準安定原子Cu(^2D_<3/2>)が検出できた。また波長324.8nmのホローカソードランプからのスペクトル線を通過させることにより基底状態原子Cu(^2S_<1/2>)が検出できた。放電をオン・オフ変調することにより、アフターグロー中の準安定原子および基底状態原子の密度の減衰を計測し、この減衰時定数のガス圧力依存性から、それぞれの拡散定数が求められた。なお、バッファガスとしてHe、Ne、Arの3種を用いた。この結果、これまで1例ある報告とは異なり、これら希ガス中において準安定原子と基底状態原子の拡散定数はほぼ等しいことが分かった。また、放電オフ直後の準安定原子の減衰は拡散で決まる速度よりも非常に速く、アフターグロー中に残存する電子による脱励起によるものと考えられた。さらに、得られたAr中の基底状態原子の拡散定数を、より高温で測定された他の結果と比較することにより、Arと基底状態銅原子の分子間ポテンシャルに関する若干の情報が得られた。
|