研究概要 |
本年度は,本研究で提案した基本構造における結合損失機構を詳しく調べ,そのメカニズムを明らかにするとともに,これに基づいて高効率化を可能にする構造を考案した。さらに試作によってその有効性を実証することができた。主な成果を以下に示す. 1.損失機構の解析と高効率構造の考案 光線追跡法によって,先球コアレスファイバを用いる結合系の損失機構を詳細に調べた。同時に,構造パラメータを種々変えた結合系を試作・評価することによって実験データを積み重ね,理論値との比較および理論の改良を行った。この際,データ処理には今年度購入したコンピュータを用いた。この結果,先球コアレスファイバを用いた場合の収差の特徴を明らかにできた。即ち,焦点面においては光線の角度ずれに比較して位置ずれが大きくなる特徴があることが判明した。従って,結合効率を向上するには,焦点面における単一モード光ファイバのコア径を大きくすればよく,ドーパントの拡散を利用したコア拡大ファイバを用いればよいことを見いだした。さらに,この構造を波動論的に解析して最適形状を求めて試作実験のガイドラインとした。 2.新結合系の試作と評価 市販の通信用石英系単一モード光ファイバを熱処理し,ファイバ端面付近のコアを4倍に拡大させたファイバを作製した。これをコアレス先球ファイバに接続して新しい結合系を作製した。この系の特性を測定した結果,波長1.49μm,作動距離160μmにおいて結合損失4.3dBを得ることができた。この値は実用的にも十分な値である。また,損失の1dB増加のトレランスは軸方向で35μm,横方向で2.6μmと,従来と比較して2倍以上大きくできた。本構造では特に,作動距離が従来のレンズドファイバとくらべて一桁以上も大きいなどの特長があり,本研究の当初の目的が達成できた。
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