本研究の目的は、光ファイバの非線形吸収(二光子吸収)の特性を解明し、フォトリフラクティブ効果、すなわち紫外光もしくは青色光を照射すると屈折率が変化する効果との関連を明らかにし、本効果を応用した新型の光デバイスであるファイバグレーティングの製作法を研究することである。平成5年度は、可変波長色素レーザを用いて二光子吸収係数の予備的測定を行ない、また紫外域の二光子吸収スペクトルを明らかにした。平成6年度はこれらの詳細な測定、フォトリフラクティブ効果の直接測定、ファイバグレーティングの作成およびその応用などの研究を行なった。 二光子吸収スペクトルの測定に関しては、440〜560nmの間の4波長で二光子吸収係数の測定を行い、480nmにおいて最大値1×10^<-4>cm/MWを示すこと、これはGe-Si欠陥やGe^<2+>欠陥による二光子吸収であることを明らかにした。また紫外域では219nmから260nmの範囲では、波長が減少すると二光子吸収係数は急激に増加することが分かった。 光ファイバのフォトリフラクティブ効果については、光カプラでの干渉を利用した測定装置を製作し、紫外光照射による屈折率変化量を測定した結果、二種類の異なった機構が働いており、従来の説のGe-Si欠陥のみでなくGe^<2+>欠陥も寄与していることを示した。 また、ファイバグレーティングに関しては、紫外域で高出力なKrFエキシマレーザを用いた干渉露光により光ファイバにグレーティングの書き込みを行い、従来行なわれていなかったマルチショット露光法で、反射率99%の高性能のグレーティングが2分程度の短時間で製作できること、また単一ショットでも反射率90%程度が得られることを示した。またマルチショット露光法ではGe^<2+>欠陥の寄与が大きいことが示された。さらに、ファイバグレーティングの応用の一つにソリトンパルスの圧縮があるため、フェムト秒域を含むソリトンの解析方法を開発した。 現在、作成したファイバグレーティングを用いて、エルビウムドープ光ファイバによるレーザ発振とその狭帯域化の実験を行なっている。
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