研究概要 |
平成6年度は表情変化に伴う顔表面の3次元形状の変化にしたがって変化する顔面の濃度変化をより直接的に捉えるため,平常顔(表情変化前)と表情顔(表情変化後)の差分画像を使用することとした.この差分画像の作製には,前処理として位置補正を正確に行う必要がある.このために本手法では入力画像から顔領域を切り出し,鼻のテンプレートマッチングによってこの位置補正を行った.差分画像は表情顔から平常顔を差し引くため,平常顔において濃度値が高く(暗い)表情顔において濃度値が低い(明るい)場合にはプラスの符号を持ち,その逆はマイナスの符号を持つ,これら正負の符号を持つ差分画像を別々に扱い,等濃線分布を作成した.等濃線は地形図の等高線,あるいは天気図の等圧線および等温線に対応するもので,顔の3次元構造を良好に反映するばかりでなく,自動抽出も容易で比較的安定に行えるという特徴をもっている.この等濃線分布について,ある単位領域毎に密度情報を抽出した.密度情報は,単位領域内に含まれる最大レベルの等濃線から最小レベルの等濃線までのレベル数で表され,表情変化に伴う濃度差分の変化の度合を表している.また密度情報を抽出する際の単位領域としては,表情を判断するのに多大な影響を与える目,眉,口の部位においては4×4画素のブロックを用い,その他の部位については8×8画素のブロックを用いた.この各ブロックの密度情報をまとめたものを特徴ベクトルとし,表情の記述および分類に使用した.4表情(喜び,怒り,驚き,悲しみ)合計54枚の表情顔について,K平均クラスタリングによる分類実験を行った結果,45枚(83.3%)の表情を正分類し,本方式が表情認識に有効であるとの見通しを得た.更に,顔部位毎の特徴ベクトルのノルムを各軸とした表情空間の構成について検討し,本手法が将来,より複雑な表情の認識についても適用可能な手法であることを示した。
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