(実績) 本研究では、原子間力顕微鏡(atomic force microscope、以下、AFM)の探針に作用する力をxyz方向の多自由度で検出し、制御する研究を行っている。一般的に、いままでのAFMでは、長さ200ミクロン程度のカンチレバ-の先端に探針を固定し、探針に作用する力によって生じるカンチレバ-の角度変化を光りてこ機構を用いて検出していた。この機構は感度が高いという利点を有するが、光てこ系一式のみではカンチレバ-に光を当てている点のあおり角2自由度しか検出できず、カンチレバ-の変形を一意に検出することはできない。そのため、本年度は、光てこ検出系を2個もちいてカンチレバ-の異なる二点の変形を同時に検出する実験を行った。これにより、カンチレバ-の変形をより詳しく検出することが可能となり、探針のピコメートルオーダーの変位を検出することが可能となった。特に、雲母の結晶表面上を走査した場合、探針先端が結晶表面上のより'親和性'の高いところに吸着しつつ走査されることがリアルタイムで可視化された。 (今後の実施計画) 今までのAFMでは、探針が意図した直線に沿って走査されるものとし、それに従ってデータをプロットして像としていたために、実際とは異なる虚為の像が得られる場合がとくに探針と試料との間に斥力が働く場合に多かった。本研究により実現した機構は、ピコメートルオーダで探針の実際の軌跡が求められるため、より正しいデータの解釈と、実際に起こっている現象の把握が可能となると考えている。今後、様々な試料を用いて観察を行う予定である。
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