研究概要 |
繊毛運動を用いたアクチュエータ群を製作するために,個々の繊毛の動きをPVDF薄膜を用いて実現した.はじめに,PVDF薄膜を用いた単体のアクチュエータ素子を設計した.PVDF薄膜の両面に成膜したアルミニウム蒸着膜をエッチングすることにより電極を製作し,単体のアクチュエータ素子として利用した。製作したアクチュエータ素子の形状,静特性,動特性をヘテロダイン干渉計を用いた原子間力顕微鏡により精度良く調べた.厚さ9μmのPVDF薄膜の厚さ方向の変形量は入力10Vに対して10nm程度であることが確認された. 単体のアクチュエータ素子の特性測定の結果に基づき,複数のアクチュエータ素子の並んだアレイ構造の設計を行なった.アクチュエータ素子間の干渉について詳細な検討を行ない,アレイ間隔,間隔領域の形状を設計した.PVDF薄膜上のアルミニウム薄膜に複数のアクチュエータ素子のアレイをリソグラフィ設備を用いて加工し,各アクチュエータ素子の形状を測定した.酸化シリコン薄膜のカンチレバーアレイやアルミニウム薄膜の櫛形電極など,設計通りの形状のアクチュエータが製作できることが明らかとなった.ヘテロダイン干渉計を用いた原子間力顕微鏡によって各アクチュエータ素子の静特性と動特性を測定した.単体のアクチュエータ素子の特性と大差なかった. 酸化シリコンの自立薄膜を用いたカンチレバーアレイを製作し,弾性特性を調べた.また,電極として使用されるアルミニウム蒸着膜の弾性特性を調べた.これらの測定結果より,実験で使用される薄膜の弾性特性はバルクのものと大差ないことが明らかとなった.この結果、薄膜を用いたアクチュエータの設計が容易になった.
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