研究概要 |
導体円柱が強い乱流媒質に囲まれているとき,もし入射波の空間コヒーレンス長dが円柱の近くで円柱の半径aより充分長い場合,即ちd≫aの場合,そのレーダー断面積(RCS)は所謂後方散乱強調効果により自由空間中に存在する場合に比べて約2倍になる。これは入射波の偏波特性に依らない。平成5年度では,H波入射時に円の内部共振点付近でRCSが極めて大きな値をとることが報告されたが,これは計算機解析による誤差であることが判明し,この問題は解決された。 しかしd〜a及びd<aでは,入射波はインコヒーレントではあるが,空間コヒーレンスが保たれている円柱上の照射領域が狭くなり,RCSはka(kは自由空間中の波数)の変化に対して特異な振舞いをする。E波入射では,d<aのときRCSは自由空間に比べて2倍より少し小さい値となるが,kaに対して振動するようになる。これは上記の照射領域の減少による。 他方,H波入射では,先述の後方散乱強調効果に直接の後方散乱波とクリーピング後方散乱波との確率的結合が加わり,RCSのkaに対する変化は極めて複雑になる。つまり,RCSは自由空間中のRCSに比べて2倍程度大きくなることもあれば,充分小さくなることもある。これ等の特徴が定量的に明らかにされ,図示されている。 RCSは入射波の散乱体上での空間コヒーレンス長に著しく依存することから,散乱体の曲率が一定でない楕円円柱のRCSを求めることが重要となる。このRCSの特徴が現在明らかにされつつある。
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