研究概要 |
本年度は,前年度に得られたレーダ断面積の特徴が一般的であるか否かを確かめ,凸面断面をもつ散乱体のレーダ断面積を明らかにするため,断面の曲率が一定でない楕円柱導体のレーダ断面積を定量的に解析し,その特徴を検討した.最後に本研究課題に対する総括を行い,研究成果報告書を作成した. 導体楕円柱のレーダ断面積(RCS)は,導体円柱と同様,波の偏波,断面軸の長さ,及び入射波のコヒーレンス長に依るが,更に入射方向にも大きく依存する.数値解析結果から,自由空間中でのRCSと比べて次のことが一般に成立する. (1)入射波のコヒーレンス長(L)が入射方向に垂直な断面軸の長さ(d)に比べて十分長い場合:L≫dの場合,E波及びH波入射ともにRCSはほぼ2倍になる. L≧dの場合,E波入射ではRCSはほぼ2倍になるが,H波入射では断面をクリープする表面電流が流れるため,RCSは複雑に変化する.その変化は,単なるLとdの関係でなく,入射方向による照射領域の曲率にも依存する.但し,RCSは小さくなることはない. (3)L<dの場合,E波,H波入射ともにRCSは入射方向による照射領域の曲率に依存する.その曲率が急峻に変化する入射方向のとき,E波入射ではRCSは1.5から2倍を保つが,H波入射ではRCSは3倍以上に大きくなることが生じる.曲率が緩やかに変化する入射方向のときは,E波入射ではRCSはあまり差がなくなり,小さくなることもある.他方,H波入射では,RCSは1/2程度になることもある.いずれの偏波の場合でも.断面の大きさと入射方向によってRCSは大きく変化する.
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