研究概要 |
実際には目標物は不規則媒質(多数の不要粒子,雨,雲,乱流等のランダム媒質)に囲まれている場合が多く,そのような状況下で目標物からの散乱波データを処理し,目標物を正確に捉える必要がある.そこで我々は,下記の研究目標を立て,その解決を試みた. 1.不規則媒質に囲まれた目標導体からの散乱を境界値問題として解析できることを,理論的及び数値実験的に明らかにする. 2.乱流媒質に囲まれて導体のレーダ断面積が,自由空間に在る場合に比べて,どのような特徴を示すかを定量的に明らかにする. 目標1について:不規則媒質に囲まれた,任意形状の目標導体による波の散乱は2つの独立した作用素の導入によって,境界値問題として精度よく解析できることを示した. 目標2について:先ず,入射波がほぼインコヒーレントになる,強い乱流媒質中に円柱導体が存在する場合を考え,そのレーダ断面積の特徴を定量的に明らかにした.円柱近傍での入射波の空間コヒーレンス長と円柱の径との大小関係により,レーダ断面積が著しく変化することを,E波とH波の両偏波に対して定量的に示した.次に,凸型断面をもつ散乱体のレーダ断面積を明らかにするため,同じ乱流媒質に囲まれた,断面の曲率が一定でない楕円柱導体のレーダ断面積の特徴を,定量的に詳細に示した. 最後に本研究課題に対する総括を行い,研究成果報告書を作成した. 以上のように,目標はほぼ達成された.しかし,凹形物体と3次元物体のレーダ断面積を算定することが実用上要求される.それらを数値解析する方法は基本的には本研究で開発されたが,実際に数値計算を実行するには,本研究助成により購入した高速ワークステーションをはるかに凌ぐ超高速ワークステーションを24時間以上フル稼働される必要がある.
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