研究概要 |
平成5年度で得られた成果を踏まえて,平成6年度では,現実の現象や問題への応用に重点をおいた研究を行なった。以下にその成果を列挙する。 1.条件付確率場の理論の実現象への適用性を検討するために,釧路市の湿原で脈動(長周期微動)の3点同時観測をおこない,それを用いて条件付シミュレーションを行った。スペクトルは観測記録のアンサンブル平均で与えられるものとして,3点のうち中央の1点での波形を,残りの2点で観測された記録を条件としてシミュレートし,実記録と比較した。比較に際しては,シミュレーション波形と実記録の一致の程度を統計的手法に基づいて定量的に示した。その結果,シミュレーション手法の妥当性が確かめられた。 2.地震波動場を確率論的に内挿するためには,スペクトル特性を事前に与えておく必要があるが,将来の地震のスペクトル特性をサイト毎に予測しておくことは極めて困難である。そこで観測記録のみからでもスペクトル特性を与え得る手法の開発を行った。これは条件付確率場の理論を振動数-ケフレンシー領域で用いることにより実現する。フーリエ系数列を直接利用する手法と,パワースペクトルを振動数軸上での対数正規仮定で近似する手法の2つを開発したが,後者の方がサイト毎の特性を反映することが可能で,より実際の現象と調和的であることが明らかとなった。 3.観測記録をもとに推定されたパワースペクトルの推定誤差も含めた波形の推定誤差を解析的に誘導し,トータルな誤差の議論を行った。 4.地震動モニタリングシステムの構築を実現しようとした場合,センサーをどこに設置するかということが問題となる。そこで,条件付確率場の理論を利用して,都市内の重要度を考慮した上で,重要な地域・施設での波形の推定精度ができるだけ高くなるような地震計の配置を与えるアルゴリズムの開発を行なった。
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