研究概要 |
本研究では典型的な夏日に実施した都市内河川内外の気象観測の結果を解析し,河道内に生じる微気象現象,河道内高水敷ならびに水面上の熱収支および河川周辺市街地の気温,湿度分布の特性を明らかにした.以下に得られた主要な結論をまとめる.(1)風が河川上を横断して吹送すると,河道内に内部境界層が発達し,大気の下層が高水敷と水面上で冷却される.冷却のおよぶ高さは,今回の気象条件下では約30m程度であり,この冷気層が市街地に侵入することにより,市街地の気温は低下する.(2)大気が河川敷上で交換する熱量(冷却量)は日中に最大となり,陸風時に比較して海風時に大きくなる.また,この量と河川周辺市街地の気温低下の間には相関があることが示された.(3)河川を構成する高水敷と水面の大気冷却に果たす役割を明らかにした.各面上の熱収支は,高水敷上では蒸発散に伴う潜熱が,水面上では水中への貯熱が支配的であり,顕熱は両面上ともに低く抑えられていた.従って,高水敷上では蒸発散による潜熱が,水面上では水中への貯熱が大気を冷却する主要な要素である.今回,市街地で実施した観測は河道内で行われた観測に比較して簡易なものであったが,河道内気象と市街地気温の分布の関連を示す結果が得られた.今後は,河川から侵入した冷気層の市街地での挙動をより精巧な観測により明らかにすることが,暑熱環境を改善する有効な対策をたてる上で必要となる.
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