(1)風が河川上を吹送すると、河道内に内部境界層が発達し、大気の下層が高水敷と水面上で冷却される。冷却のおよぶ高さは、今回の気象条件下では約30m程度であり、この冷気層が市街地に侵入することにより、市街地の気温は低下する。 (2)大気が河川敷上で交換する熱量は日中に最大となり、陸風時に比較して海風時に大きくなる。また、この量と河川周辺市街地の気温低下の間には相関がある。 (3)河川を構成する高水敷と水面が大気冷却に果たす役割を明らかにした。高水敷では、蒸発散に伴う潜熱が、水面上では水中への貯熱が支配的であり、これらが大気を冷却する主要な要素である。 (4)静水圧近似により、境界層内の大気の流れをモデル化し、シミュレーションを行い、風速分布、温度分布、水蒸気分布などを良好に再現した。 (5)感潮河川では、熱収支は水塊の流動に伴う移流の効果を強く受けており、潮汐によって水温が上下している。水温分布は、湖で観測された例と比較するとより一様化しており、表層と下層の水温差は本観測では高々1.5度であった。このことが、河川の大気冷却効果を高めている。 (6)都市に水面と緑地を配置するに当たって、その効果を定量的に見積もりうるモデルを構築し、シミュレーションを行った。
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