研究概要 |
本研究は,海老川流域を対象にGISデータ手法等も用いた流域スケールの水循環の中で,雨水貯留・浸透システムの効果を評価できる分布型モデルを構築することを目的としている.本年度実施した研究内容と得られた知見について以下に示す. 1.収集した用水関係統計資料等と水文・気象観測結果を基に,大粋としての流域水循環が把握できた. 2.水循環要素のひとつである地下水流出量を量的に把握するため,低地部(3ケ所)に加え台地部(1ケ所)にも地下水位計を設置し観測を既に開始した. 3.すでに海老川流域では,貯留・浸透施設の導入が行なわれている.その施設の効果の評価を行なうために,現在各施設の数と設置場所,設置密度の調査を実施した. 4.貯留・浸透施設からの浸透能の評価,あるいはGISデータベースのための流域内土譲特性データを取得するため,流域内の5地点で現地透水試験を実施した. 5.実測ハイドログラフを解析することにより,海老川,前原川とも無降雨日に規則的な日周期パターンが存在し,降雨に対する応答が非常に速く,降雨終了後の流量低減が急速であることがわかった.そして流量の自然系と人工系成分への分離を行なった結果,海老川では基底流量が日周変動分流量に比べ非常に大きいことがわかった.特に7〜9月に多く,これは農業揚水の影響と考えられる.そのため,流域内の農業揚水使用量の調査を行なった 6.分布型水循環モデルの入力データとしてGISデータベースの構築を進めているが,これまでに標高データ,土地利用区分あるいは流域土壌特性データを収集してきた.今後さらに地質,地下水等高線等多くのデータを組み込みデータベースの充実をはかる. 7.各水循環要素の推定精度を向上させることが今後の課題である.
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