研究概要 |
地震波は3次元に挙動する波であるため,構造物の応答性状に対しても3方向の重畳効果が作用する。本年度は,サブストラクチャー・オンライン地震応答実験を実施し,鉛直方向と水平一方向の重畳効果の検討を行った。サブストラクチャー・オンライン地震応答実験とは,弾塑性地震応答解析において,建物の応答に大きな影響を与えると思われる部材の復元力特性を実際に試験体を加力することにより得て,他の部材に関しては,数字モデルで代用する実験法であり,構造物全体の振動実験の実施が困難な規模の構造物に対して有用な実験法である。 研究対象建物は日本建築学会「鉄筋コンクリート造建物の終局強度型耐震設計指針・同解説」に準拠し耐震設計した鉄筋コンクリート造2スパン12階建て建物の平面構面で,実験対象は1階中柱とした。実験実施のために,弾塑性平面骨組地震応答解析プログラムを開発した。これは各部材両端の断面にファイバー・モデルを使用することにより構造物の地震時挙動を詳細にシミュレートすることが可能な解析プログラムである。 柱部材の加力は3台のアクチュエータにより行い,2軸3自由度,すなわち材端部の回転,せん断,軸方向変形をパソコンにより制御した。また,地震応答解析用のコンピュータにはEWSを使用し,柱試験体の復元力,加力目標変形のデータのやり取りはRS-232Cインターフェイスを介して行った。 今回の実験により2軸3自由度の加力法を確立し,その実用性を検証することができた。実験の変動因子は鉛直地震動の入力レベルであったが,建物全体の応答変形量に関しては鉛直地震動の入力は大きな影響を与えないことがわかった。しかし,柱部材に注目すると,鉛直地震動を入力することにより柱の反曲点位置が大きく移動し,部材に生じる損傷に差異が生じることが明かとなった。
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